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試作連詩 「ネジマクキセツ」

第一回 連詩(試作品) 

  ネジマクキセツ


腹をすかせた
池のコガモが
水面に頭をつっこんで
煽りを食った

今日こそは幸福をつかもうと
池ばかりを見てきたが
どこへいっても大差なく
藻に足をからませて水をかくだけだ
                   佐々木



やれ石を投げろ
いやパン屑を投げろ
他に投げるものはあるか
あるはずもないだろう
鳥にくれてやるものなど
一昨日のメタセコイアの林でも
そうだったじゃないか
                   田村



空の手を
上にも下にも振らないうちに
水面にいくつかの波紋が見えて
ふいに現れた巨きな魚が
コガモをひと呑みにしてしまった
                   今野



変化はおこるものだ と
同じような日常を繰り返すうちに
ある日とつぜん
何もかもが変わってしまうようなことがおこる と
真剣な顔して言っていたのは誰だったか

コガモの鳴き声がきこえない

今日 変化が訪れたのだ
                   佐々木



ぼーうりん どぅっどぅー
ぼーうりん とぅっとぅー
蠕動する内壁
銀河が犇めき合っているのだ
解るかい? 幾つもの
ぼーうりん どぅっどぅー
遥かなる同心円を観測するためには
いったいどの鳥に頼めば良かったのかな?
星の屑が滴り落ちる
ぼーうりん、
そしてその星の屑すらも
既に呑み込んでしまっている
とぅっとぅー、
とぅっとぅー、
                   田村



幼い未来を取り込み巨魚は
いちど小さく飛沫を上げ
ふたたび水の上を跳び
ちょうどみっつめの跳躍で 一際高く羽ばたいた

                   今野



その羽ばたきはかねてからの夢であった
つばさを持ちながらも飛ぶことのできなかった
恥辱の鳥
あわれにも幸福な鳥
そう 飛ばないことは幸福なのだ
危険を冒さぬ幸福なのだ
だが 鳥は 小さなコガモは
いま 大きな運命に飲み込まれ 飛んだのだ
夢は 幸福をのぞまなかった
                   佐々木



空を見たことがありますか
空の中のあなたを見たことがありますか
空とは何処ですか
あなたにとって空とは
馬頭星雲の美しい首筋ですか
気象観測衛星の硬く締められたネジですか
溶けかけた虹の頂上ですか
避雷針の林を抜ける天使の羽音ですか
割れたままの窓ガラスですか
グラジオラスの葉の残像ですか
雪の中の髪の毛のような醜さですか
それとも見えている何もかもですか
気をつけてください
あの天使はあなたを殺すかもしれない
あなたが
あなたの空を見つけ出すと
                  田村



まだ柔らかい翼が軋む
どこかで骨の音がする
たとえば空が ここだとしても
翼は未だ それを目指す
                  今野



音をたてているのは
軋むのは
空を打ち砕くほどの激痛を伴う夢は
あなたを目指すのか
あなたの空を目指すのか
そして あなたを落下させようとするのか
この不恰好な翼をあなたに絡ませたい
もつれて 溶けて 
あなたのなかでいっぱいになって
どこまでも 混ざり合って

もうどこにもいかない
                   佐々木



やけに静かだ
唸るような喧騒の中で
暮れてゆく空の中で
何も変化していることなどはなかったのかもしれない
全ては原子たちのたゆまぬ戯れ
地球の表皮の蠢き
観客のいない
宇宙による
時間の襞を揺らす
静謐な舞踏
                   田村



腹をすかせた
池のコガモが
水面に頭をつっこんで
煽りを食った

遠くのほうで
魚がはねる
随分と 大きな空振り

光が散って
池はそれきり
だんまり
                   今野



消えてしまった もう消えてしまった だが あくまでも残滓 そこに私があると思わせて欲しい どこへもいかないまま辿りついたこの水溜り いったい何年分の私があふれているのか あふれようとしているか どれだけの夏を耐えなければならないか 永遠とも思えるほどの熱 流れ出ていく私 それが もう あふれるのか だが また その瞬間を見送らねばならないとするならば ただのコガモとしてこの完全なる季節を すべてが宇宙の記憶とともにめぐるこの季節を生きねばならないだろう 知らなかった? いや もう私たちは知らなくてはならない 何も得られなかった日々のことを ただ繰り返す季節のことを それでも 残滓 また渇望すべき 光
                   佐々木



詩の柱が立っている
それは何処にも向かうことは無いが
その垂直を
時さえも動かすことが出来ない

                   田村



それでも影は
形を変えて
あるいは変えず
また元通りに

かたちを変えて 知るべき季節へ
円のふりして 知るべき季節へ
                  今野

       完
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by kikan26 | 2011-09-26 22:48 | 詩(連詩)